2012年3月8日木曜日

羽生vs中川の歴史的大逆転について

羽生vs中川の歴史的大逆転について

羽生さんが必敗の状況からまさかの大逆転勝利をおさめた有名な将棋についてです。



あの将棋はプロレベルの将棋だったからすごかったのでしょうか?

もし、アマチュアの将棋だったら?

もし、実際に指したのは羽生さんvs中川さんだけど、アマ四段vsアマ五段など『ウソ』の肩書きを添えて譜面だけだったら?

もし、解説が加藤一二三先生じゃなかったら?

もし、羽生さん、中川さんじゃなかったら?

もし、人間vsボナンザ(ソフト)だったら?



どういう見方をされたのでしょうか?

これは、安そうな品でも1万円と書かれると高そうに見えてくる心理ですが、

一般人ではなく、ある程度将棋を知っている人での目線で考えていただきたいです。



よろしくおねがいします。


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まず、あの将棋を歴史的大逆転と呼ぶことには大いに違和感があります。

確かに中盤から終盤にかけてずっと後手の中川七段の楽勝の将棋に見えましたし、解説の加藤九段もそのように解説していましたが、実際には超難解な終盤であり、直接の敗着となった26歩に代えて98竜と角を取っていても一筋縄でいく将棋ではなかったことはその後の検討で明らかになっています。



当の羽生さんは中盤以降全然ダメだと思っていたと語っていて、名手に見えた98角も成算があって指した手ではなかったということでしたが、結局はその手が後手玉の死命を制したわけで、このあたりが羽生マジックといわれる所以かと思います。



この将棋から感じることは並外れた終盤力です。それは指し手が誰であろうと関係はありません。

ただ本局がこれほどまでに話題になったのはテレビ棋戦であったということと、ゆえに動画が残っていたのでそれらがyoutubeやニコ動にアップされて多くの人がウォッチしたからですね。

これがアマチュアの将棋であれば恐らく私の目には入っていなかったでしょうから見逃していた、それだけです。

もし目に入ればこんな強いアマチュアがいるのかとより感激したかもしれません。



そういうことですね。



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質問の内容に答えますね(笑)

あの対局が羽生-中川以外だったらという事ですが、秒読みであの粘り方、逆転までの構想が神業だったので(厳密には羽生さん必敗でした)、例えば将棋倶楽部24の高段者同士があの対局を繰り広げて私が観戦していたら、普通に凄いなと思いますよ。それ以下の方はあの羽生さんのような将棋は秒読みでは指せません。

解説が加藤さん以外でも、盛り上がったのは間違いないです。ただあの大逆転の直前、加藤さんは羽生さんの序盤戦術を責めてそもそも論を展開していたので、解説も「大逆転」でしたね…


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この将棋はなんだかよく分からない手が多いです。153手目の▲3八玉が妖しい羽生マジックだったと思います。この手は▽9九竜の王手を避けた手なのだけど、普通は▲8九歩と合い駒を打ちそうな局面なのです。それで竜の利きを遮断した方が先手玉が安全そうだし、▲3八玉は竜の利きが1九の地点まで素通しだし▽2六歩が飛車を取りつつ次ぎに▽2七金の詰めろでぴったりに見える。だから▲3八玉は一見ココセのような酷い手に見えるのです。中川七段は当然のように▽2六歩とします。ところが▲2二銀以下どう応じても後手玉は歩が一枚も余らずに詰み。ということは▲8九歩と歩を使ってしまうと、この詰み筋が無くなってしまうのでありました。だから持ち駒を温存して▲3八玉としたのです。また、それは▽2六歩を誘うための罠でもありました。▽2六歩でなく▽9八竜と角の方を取られていたら、後手玉に詰みがありません。▲2四銀▽同玉▲3六桂▽2三玉▲2五飛▽2四歩で王手は続くがつみません。詰まないのなら単に▲2五飛とするぐらいでしょう。これでも先手の勝ちだったのかも知れません。しかし後手にも手段が多くてはっきり読みきるのは難しい。

結局のところ、▲3八玉のところ▲8九歩では▽2六歩で先手玉が詰めろで後手玉が詰まず、明白に先手負け。▲3八玉に▽2六歩なら明白に先手勝ち。▽9八竜なら難解といった辺りが羽生マジックの裏側だったのではないかと。時間があるなら誰でも読みきれるところでしょうが、30秒の秒読みですから大変な難事です。こういうドラマ性が加藤九段の解説と相まって視聴者には、まさかの大逆転勝利に見えたのではないでしょうか。ここでは▲3八玉の周辺だけを解き明かしましたが、ここまで延々と妖しい手が続いていたわけで中川七段もさぞ疲れたのだとも思います。121手目の▲8四角成なんかわざわざ王手馬取りにかかりに来たような手で、どんな罠が仕掛けられているのだろうかと中川七段は疑心暗鬼になったのではないでしょうか。視聴者もそういうドラマ性を感じ取っていたに違いありません。


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あの大逆転は、ひとえに加藤先生の誤解説によるものです。

「史上稀に見る大逆転」ではなく、「ひどい誤解説」をして

しまった手前、大逆転と言わざるを得なくなってしまったのです。



正しい解説をすると、羽生さんが飛車で桂馬を取った手が

「詰めろ」で、同歩と取り返すと詰んでしまうため、すでに

難しい局面でした。



正しい解説は「飛車で桂馬を取った手が詰めろで、

同歩とは取れませんね。かなり難しい将棋です。」と解説すべき

だったところを「同歩でいいんです。後手玉は詰みませんからね。

羽生さんの敗因は矢倉にしなかったことです。」などと敗因分析

までしてしまったものですから、ここから即詰みがあったことを

「大逆転」と言わざるを得なかったんですね。



ただ、本局の詰みは、加藤さんも中川さんも見落とすくらい

ですから、解説が間違うこと自体はやむを得ないのですが、

自信満々に「詰まないので、羽生さん負け」と言ってしまった

ことで「大逆転」と言わざるを得なかったのが真相です。



解説が谷川さんなら、「2二銀以下詰みそう」とか解説して、

「大逆転」という表現にはならなかったかもしれません。

アマチュアだったら、奇跡的な詰みを発見したねぇ、と言う感じです。



中川さんが逃げ間違ったわけではないので、本当は「大逆転」では

ない気がします。


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あの対局が「歴史的大逆転」と言われることは無いと思います。

①NHK杯の二回戦だから。

せめて挑戦者決定の一局とかでないと。

②勝ったのが羽生先生だから。

これが、NHK杯の決勝で、そして勝ったのが中川七段だったら、もっとすごかったかも。

・・・・・

名人戦の森内羽生戦の超大逆転と比べると、それほどでもない。


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将棋の色々にケチを付けるのはやめてください。

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